October 24, 2009

接吻

世界の名画、みたいな本が家にあって、それに載っていたのを見たのが最初だろう。クリムト。

中学の頃は変わった絵だなとしか思っていなくて、それよりもっと変わっている、ダリとかの方がインパクトで。中学生の美術の時間に隣だった子がダリ大好きだったけど。

美術の時間しか絵に触れなかったし、周囲には絵描きもいないし、絵好きも(多分)いないから、絵のことは全然知らない。無知蒙昧。~派といわれたところでわからない。そんなことは文学であろうと書であろうと彫刻であろうと、あらゆる芸術においてそうなのだが、芸術というものは、考えるな、感じろ、の世界であると勝手に認識し、いかなる表現も受け手の取り方に委ねられているとさえ、思っている。
でも、背景を知ればもっと面白くなるだろうな、というのは思う。

で、クリムト。
私はその後、つまりその本で見て以来、特にクリムトとは縁のない生活を送っていたが、ある日、何かの拍子でクリムトを検索する機会があった。恐らくはネットサーフィンの過程でであろう。

クリムトの代表作「接吻」は、圧倒的な幸福感を伴って私の前に現れた。
中学生の頃には感じきれなかった、幸福が眼前に迫っていた。小さなディスプレイの中にもかかわらず。
恋をする、という経験が、その幸福感をしっかり感じ取るようにさせたのは明らかだった。多分何人もの人が、この絵の中の女性と自分を重ねたと思う。黄金と花のような模様とで彩られた、同じ布にくるまって。
私には当時恋人がいたのだろうと思う(はっきり覚えてないけど想い人はいたはず)。

そして、今この絵を見て感じるのは、一瞬の輝きのようなもので。
当時ほど感情移入できないのがかなしいけど、やはり美しい絵であると思う。
変に大人になってしまったというか、一歩引いてしまったというか。

歌の歌詞なんかが、経験を積む間にわかるようになる、というのはあるけれど、絵でもそういうことがあるなあと、まあ当り前ながら思った次第。そうしてそのわかった!感が、遠くになってしまうこともまた、あるのだなという。

何故かこういうエントリが続いてしまった。
ちなみにクリムトのことを書いたのは、目の前にクリムトの絵のカードがあるからである。他意ない。

そういえばクライマックスシリーズ巨人勝ったね!とか書けばよかったのかなー。

※参考
クリムト:接吻

2 comments:

  1. クリムトの接吻を初めて見たとき、なんて刹那的で幸福な画だろうと思いました、私も。
    クリムトの画には、いろいろな意味が込められていますよね。服の柄とか背景とか。強いメッセージ性がある。「なるほど」と共感できる。あと、肌の色が個人的には大好きです。
    感応的だけど切ない。大胆だけど繊細。そんな感じ。

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  2. >刹那的で幸福な画
    >大胆だけど繊細

    同感です。この絵についての解釈は読んだことはないのですが、感じるままに任せると、やはり恋愛の途方もない幸福と無謀さとか、刹那的で盲目的なところだとか、繊細な感情の機微なんかが共感できて。
    風景画以外で絵に共感するということはあんまりないんですけど、この絵はただただ頷けるというか。
    男の人はまた、違う感じ方をするのかもしれないと思いました。
    ていうか!コメントありがとうございます!

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