December 15, 2010

時間のないころのゆめ

最近、ホットソイココアラテ的なものをよく飲んでいる。おいしい。
豆乳をレンジで2分あたためて、ココアひとさじ入れるとできる。

そういえば、子どもの頃は飲み物をゆっくり飲むということができなかったような気がする。
大人たちがゆっくり、一口ずつコーヒーを飲んでは何かしゃべって、ときどき思い出したようにまた一口飲んだりしているのを傍で見ていて、どういう風にすればああいう飲み方ができるのか不思議だった。
飲み物というものは、のどが渇いていたり、おいしかったりして、最初にごくごく飲んでしまうのだった。

今ではもちろん、ゆっくり飲むこともできるし、急いで飲むこともできる。喫茶店で長居したいがためにコーヒー一杯で場を持たせるということもできるし、もう店を出るからってジュースを干すこともできる。大人になると、そういうことはうまくなるなと思う。

つまりは、飲み物が主役じゃなくて、脇役というかおまけというか口実になったんだなと思う。誰かとおしゃべりをするために、とか、小説を読むために、とか、そういうののついでに飲み物があるとなんだか様になるというか。
でも、結局夢中でおしゃべりをしたり小説を読んでしまうときというのは、飲み物を飲んでないなと思う。
子どもの頃って、飲み物が目の前にあると、飲み物に集中してしまってたんだろうな。

もしかしたら、大人が飲む飲み物は、場を持たせるために選択されているのではないか。わざと、ごくごくとは飲めないものだったり、飲んでしまうと勿体ないものだったり。コーヒーとかお酒とか。


最近昔のブログを読み返していて、ああこういうこと考えてたな、とか、感慨にふけったりしたのだけど、とにかく時間の流れの感覚が大分変わってきたなと思う。変わってきたというより戻ってきた。沖縄にいたころに。
たとえば、沖縄に帰ってきて少し経った頃のエントリ「時は金か」にこう書いてあった。

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時間って、つぶすものなの?って思っていた。時間を有効に活用する、とかも、時間に有効も無効もあるかい、なんて思ってはいないけど、なんか大人って大変だねと思っていた。
子 供の時は、目の前にはやることが沢山あったし、時間は潤沢にあったから糸目をつけずにつかっていた。学校で授業受けて、遊んで、目の前の宿題とかやって、夕方になったらご飯食べて、また好きなことして、寝て、っていうのを繰り返して、マネジメントなんて考えもせず、ただすくすくと、それでものんびり成長してたよなあと。でもそんな子供時代にも、余所の子はもしかするとタイムマネジメントを叩き込まれて育ったのかもしれない。

で、マネジメントマネジメントって言われると、そういう自然児には適応の限界があるんだよーという話。
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で、自然児は自然に戻った。

沖縄には沖縄の時間が流れていて、それはまぎれもなく私の体内に元々流れる時間と同じ速さだった。でも、東京で速めた時計をまた沖縄の速さに戻すのには時間がかかった。時差ボケの二年間。
でもこの二年間って、「時間のないころのゆめ」をもう一度見ることができた、うれしい二年間だったのかもしれない。
ちなみに、「時間のないころのゆめ」というのは、宮沢賢治の「雲の信号」という詩に出てくるフレーズ。

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  雲の信号
               
あゝいゝな、せいせいするな
風が吹くし
農具はぴかぴか光つてゐるし
山はぼんやり
岩頸だつて岩鐘だつて
みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ
  そのとき雲の信号は
  もう青白い春の
  禁慾のそら高く掲げられてゐた
山はぼんやり
きつと四本杉には
今夜は雁もおりてくる
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※参考:宮沢賢治の詩の世界:詩碑「雲の信号」
参考エントリ(trace of)

今は、沖縄に戻った頃のように時間を無為に過ごすことに罪悪感もなくなったし、焦りもなくなった。文字通り時間を糸目をつけずに使っている。家族と他愛ない会話もする。買い物にも付き合う。テレビとかもそんなに見たくなくても見ちゃう。時間がかかっても歩く。つまり、時間がもったいない、って思わなくなった。今書いてて思ったけど、時間がもったいないって、結構自己中な考え方だなと。自分のためにフルに有効に使いたい、ってことだよなって。
時間はもちろん有限だけれど、それを切り詰めると人生がきゅうきゅうとしてきて、人生的に何かがマイナスになりそうで、結局とんとんなのかもなと思う。人生を効率的に使おうとすればするほど、その分何かが減ってるような気がする。


ああ、もう大丈夫だなと思える今日この頃。

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