October 4, 2009

国歌聴き比べ

F1は鈴鹿が始まっている。
予選Q2でのグロックのクラッシュは心配だが、何よりアロンソがフェラーリに移籍するというのが個人的には衝撃的というか。確かに彼には競争力のあるマシンに乗ってほしい、力を発揮してほしいというのはあるんだけれども、どうもあの跳ね馬と赤さが私の好みでないのである。赤いだろう、いくらなんでも。赤すぎるだろう。ルノーもちょっと前青一色もなあとは思っていたけど今のカラーリングはpopでかわいくて好き。まあいいや。

そういう話をしたいのではなくて、今日は国歌について。
昨夜頭痛により眠れず、小澤conducts世界の国歌/新日本フィルハーモニー交響楽団をiPodで聴いていた。このCDは、長野五輪の際に使われた小澤征爾指揮の新日本フィルが演奏した国歌集で、かなりいい。かなり綺麗だ。
何故このCDを持つに至ったかというと、2005年頃私は上記アロンソをかなり応援していて、ほぼ毎GP観ていて(大抵深夜の録画だけど。スカパー熱望していた。)、マイミクの方ならご存知だろうが、mixi日記はF1ばかりという有様であった。ていうか、F1放送してくれてフジテレビありがとうって思ってたけど、同時に実況と解説というか番組に右京はもういいから、とか、永井大がなんで司会なんだとか、シューマッハシューマッハってうるさいよ、とか、フジテレビに難癖つけていた、若かったのだ。

そんな中でアロンソが優勝すると、かつ生放送だと、スペイン国歌が聴けた(録画だとカット。あと、ルノーだったのでフランス国歌も流れる)。彼は唯一のスペイン人ドライバーで、かつスペイン国籍の企業(チーム)はF1に参戦していないので、スペイン国歌が流れるということがすなわち彼の優勝しかありえないのである。
それで、スペイン国歌聴きたいなあと思い立ってこのCDを手に入れることと相成ったわけである。

このCDには全部で67の国歌が収められている。
で。
スペイン国歌は何度も聴いたが、日本の国歌はあまり聴かなかった。
ご存知の通り、日本の国歌は「君が代」だが、「君が代」というその字面、響き、それがものすごくイデオロギッシュというか、なんとなく触れてはいけないものというか、こわいもの、みたいな感覚もあったし、私自身がその旋律が暗い、というか、重い、と思っていたのだった。好んで聴く音楽、ではなかった。

CDを通して聴いていると、明るい曲、鼓舞するような曲がほとんどを占めていることに気づく。アメリカやフランスはよく聴くので皆知っていると思うけど、ギリシャとキプロスの国歌(この2つの国は国歌が同じである)はまるでワルツだ。イギリスとリヒテンシュタイン(この2つも同じ曲。歌詞が異なる。)も明るいし、勿論スペインも明るいし、まあとにかく明るい。その地方の民謡がベースになっていたりしてお国柄は出ているのだが、正統性というか、一体感というか、感動的というか、そういう感じなのだ。

その中で、目を引いてしまうのが、日本と、イスラエルだ。

イスラエルの国歌は、Hatikvaといい(読み方は知らない)、希望、という意味らしい。
この曲は、タイトルに反して、もう、とにかく暗い。悲哀に満ち満ちている。何事かと思うほどに美しくかなしい旋律である。ユダヤ人達の放浪の歴史が刻み込まれている。彼等の念願かなっての建国の際につくられた曲にもかかわらず、とにかく悲哀に満ちているのだ。これから前を向いて、この国を新しく、立派で健やかな国にしていこう、と、そういう感じではないのだ。アメリカとかほかの国はそんな感じなのに、イスラエルは違う。重荷を負って、罪を背負い、この辛く苦渋に満ちた世界を、生き抜いて見せよう、わが同朋たちよ、という感じである。
そういえば、イスラエル民謡の「シャローム」も悲しげだ。
もしかしたら、彼等の世界観なのかもしれない。興味引かれるところである。

そして、日本。
日本の国歌を改めて聴いてみた。歌詞は入っていない。
他の国々の国歌を聴いた後にこれを聴いて、ものすごく美しい、と思った。気づかなかったが、あの旋律は、すごい。なんだかわからないけど、他の国とは一線を画している。
もののけ姫の世界を彷彿とさせるような、豊かな森が目に浮かぶ。穏やかで、終始静かな、盛り上がり過ぎることなく、しかし厳かな。終わり方の妙。後を引く。日本らしい曲だと思う。

小澤征爾が、オーケストラでやったというのがまた良かったのかもしれない。彼がこれらの演奏をする上で一番大事にしたのは、彼や編曲者の解釈でやるのではなくて、その国の人が聞いてよかったな、と思われるものにしなければならない、ということだったと、ライナーノーツには書いてある。音楽を愛している日本人が、日本人がこれを聴いて、よかったなと思うようなものを作ろうとしたら、こうなったのかと、思った。

「君が代」って聞くだけで顔をしかめる人達が結構いるので、君が代をこれだけ褒めちぎったのも初めてだけど、音楽に罪はないのだ。本当にそうだ、音楽には罪はない。
歌詞だって特に悪いとは思わない、というか、狂ってるとかばかげているとかは思わない。歌詞は古今集の賀歌からとったとされているらしい。結構きれいな詩だと思う。
天皇の御世がずっと続きますように、っていう歌だけれど、戦争に負けたから、その指揮をとるのに天皇も加担したから、国民の団結を強めるために使われたから、国民がそれに丸めこまれて強制されたから、そんな歌詞はもう見たくもない、ということなのかもしれない。そう思う人がいるのも当然といえば当然なのかもしれないし、それは心から理解はできないまでもなんとなく理解はできる。
私も音楽を強制するのはいかんと思う。強いられるのが嫌いだから、これも嫌いだ。


音楽って、歌詞がなければ、意味を考えなくていい、自分で意味を与えられるものだからいいなあと思っていたのだが、その旋律自体が意味をもった、国単位で思い入れがこもった音楽というものが、あるなあという発見。
でも、それの意味をとっぱらって、純粋に音楽として聴いてみたら、楽しいかもよ、という提案。
スペインの国歌なんかは、私にとってはアロンソに関連する曲、ただそれだけだったから、普通に好きになったんだと思う。

2009WBC決勝の「君が代」がちょっと違った感じでなかなかよかったので、ぺた。映像なし、音楽だけで聴いてほしい。

WBC決勝 不思議なアレンジの君が代(youtube)



・参考
スペイン国歌(youtube)

アメリカ合衆国国歌(youtube)

フランス共和国国歌(youtube)

ギリシャ共和国国歌(youtube)

キプロス共和国(youtube)

イギリス(グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国)国歌(youtube)

リヒテンシュタイン国歌(youtube)


イスラエル国歌(youtube)

日本国歌(youtube)

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