June 16, 2009

雨とコーラ

雨が今日も降っている。当然だ。梅雨なのだから。

雨は水なのだけれど、水が降っているとは言わないなあと思う。明らかに水なのだけど、言わない。空から降る水は、水ではなく雨と定義されているに違いない。何せそこらへんにある水とは格が違うのである。空から来るのである。では空から降るおたまじゃくしは何と定義されうるのだらうか。

ま、どちらにしても、コーラは飲めない。

雨とコーラが関連付けられた頭の中では、雨の日にコーラを飲むことはもしかすると素敵なことなのではないかという考えが浮かぶ。晴れの日にコーラを飲むのはなんだか当り前だからな、と思う。コーラは清涼飲料水なのであって、清涼な飲料を必要とするのは普通に考えれば雨の日より晴れの日なのである。


そうして私はコーラを買いに雨の中出掛けたことが、実はある。東京は学習院下に一人で住んでいた頃である。普段のフットワークは全然軽くないくせに、こういう思いつきのためには雨を厭わないところがいかにも怠惰である。
家にはコーラが常備されていたことが全然ない。そういう家庭だった。たまにコーラが飲める時というのは、母は「少しだけならいいよ」と言った。小さい頃、そのコップに入ったコーラの少なさに抗議して、このコーラは「少し」ではなく「ちょっと」だ、だからもっと入れてくれといった類のことを言ったのを覚えている。私の感覚では「少し」の方が「ちょっと」より多かったのである。

それで私は雨の中コンビニへ、サンダルの足を濡らしながらビニール傘を差して、歩いて行った。普段飲まないコーラを、健康に悪そうなパンチの利いたコーラを、果たして買ったのである。

家に持ち帰って、窓を開けて、雨であるということを確認しながら飲んでみた。
コーラの味は久しぶりで、普段、コーラの味をガリガリ君コーラ味の味だと幾分錯覚していた私は、その甘みの少なさに少し驚き、炭酸の刺激は思ったより辛く、後味に少し苦いものを感じた。
つまりは、おいしくなかったのである。しかも結構おいしくなかったのである。


家では飲ませてもらえなかったコーラを自由に飲めるようになった今でも結局全然飲んでいないということの理由を、もう少し深く考えるべきであったと、その小さな試みの失敗に、飲み物に二酸化炭素なんか封入する意味がわからん、まったくわからん、何を考えてるんだ、と何かを棚に上げてひとしきり憤慨した後に、雨はコーラが「飲めない」のだと、はたと気がつくのである。


に、してもコーラという飲み物の不思議な魅力というのはやはりあると思う。コーラの持つイメージ。古き良きアメリカ、瓶から直接飲んでしまう文化、不健康で格好いいような、認められた不良文化のような、ジャンクで歴史のあるカラメル色の泡立つのみもの。
コーラ作ってた人にアップルかどっかの人が、君は一生砂糖水を売って過ごすのかというようなことをいって引き抜いたという話があるのだけれども、しかしただならぬ砂糖水である。


またつまらぬものを書いてしまった。
雨が降っているから悪いのだ、私のせいではない。


ちなみに、沖縄にあるアメリカのファーストフード店A&Wルートビアは見た目コーラに類似した飲み物で、少しだけ薬っぽいが美味しい。
炭酸も弱いし、甘い。チェリーコークとかが好きな方は一度是非。

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